「アントニオ・マリン」は有名なギター製作家で、僕は日本を出る前から彼にギターを作ってもらおうと決めていた。
下調べをした結果、彼の元には世界中から注文が来、ギターができあがるまで数年待たねばならないこと、そして作ってもらうために彼の前でギターを演奏して認めてもらわなければならないことになっていた。
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彼の工房はグラナダのアルハンブラ宮殿に向かう坂道の途中にあった。
工房には看板も表札もなく古びた普通の民家で、探し当てるのにたいへん苦労した、
おそるおそるドアを開けて「オラ!」と声をかけると、奥からアント二オ自身が出てきてくれた、
僕はギターが欲しいむねを伝えると、彼はこころよく奥の工房へ案内してくれた、
そこでは2人の若い弟子がギターを作っていた、
アントニオは出来上がったばかりのギターを僕に渡し、弾いてみるように言った、
ギターはまだ塗装がされておらず、音色は素朴な感じがした。
僕はアントニオと2人の弟子の前で、演奏をした、
そして、ギターを作ってもらえる事になった。
ただし、出来上がるまで3年待たなければ、ならないことを聞かされた。
僕は住所を書き、彼の工房を後にした、
彼はいつまでもドアの前で見送ってくれていた。
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そして、3年後に、彼の元から、ギターが出来たという連絡が来た、
しかし、日本の輸入業者と専属契約をしているために、日本に送ることは出来ないので スペインまで取りに来て欲しい、という事だった。
その時の僕は 時間的、経済的にもスペインまでギターを取りに行ける状態ではなかったので
泣く泣くあきらめる事にした。
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現在はオーストラリアの製作家「ツビニエフ・ナテック」のギターを使っています。