スペインを訪れたら、ピカソの「ゲルニカ」を是非見たいと思っていた。
そのためにゲルニカの町にも行ってきた、
ゲルニカの町は「ゲルニカ」を展示してあるマドリッドからはるかに遠く、スペインの北の端にあった。
ナチスが爆撃をして破壊してしまった町は今は 静かで平和な町になっていた。
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そしてプラド美術館に「ゲルニカ」を見に行った、
館内は広く、端から見ていけばすぐに見つかるだろうと思っていた。
しかし ここの美術館には膨大な量の絵画があり、5時の閉館が近づいてもいっこうに「ゲルニカ」は現れない。
僕は、係員に「ゲルニカ」はどこに展示してあるのかを尋ねた、
それは別館にあるという事だった、
もう閉館の時間が間近に迫っていたので僕は走って別館へ向かった、
別館に着いたとき、まだ5時の閉館前なのに係員が入り口を閉めかけていた、
僕はおじさんに、入れてくれるように頼んだ。
おじさんは「明日、また来い」と言った、
僕は「今日はスペイン最後の日で、明日は日本へ帰らなければならないので、少しでいいから見せて欲しい」と頼んだ。
おじさんは頑として、「明日、また来い」と言った。
何度頼んでも無駄で、僕はあきらめて美術館を後にした。
その時、おじさんの言ったように ”必ずもう一度来てやる”と心に決めた。
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数年後、再びスペインを訪れる事になり、「ゲルニカ」を見ることが出来た。
絵は以前のプラド美術館から、ソフィア王妃芸術センターに移され、そこを安住の地としていた。
初めて見た「ゲルニカ」は感動的で、展示してあるこの部屋には僕以外誰もおらず、
「ゲルニカ」を独り占めしている喜びと、前回からの思い入れが重なって、5分ほどそこに立ちつくしていた。
そして、何度も、何度も、振り返りながら惜しむように「ゲルニカ」を後にした。
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